BCGは、これまで30億人に接種されてきた、結核生ワクチンで、安全で、安価、さらに強い免疫賦活性を有します。BCGの組み換え技術で難病の予防抗原を発現させ、結核以外の重大な感染症(AIDSやマラリアなど)、アレルギー、や癌(J Exp Med 1998, Vaccine 1999, J Urol 2000, 2005 J Virol)に対するツールの原型を開発してきました。
一方、BCGは、小児の結核性髄膜炎や粟粒性結核予防に対しては80%程度の効果があるものの、インドでのおよそ10万人を対象とした試験では、効果無しと判定(BCG接種者の方が、結核をより多く発症していた)されたように、肝心の成人結核に対する効果は懐疑的です(Lancet
1980)。日本では新生児に対してBCG接種が行われていますが、実際に年齢増加とともに結核発症率は増加し、60歳以上で発症が多くなっています。これは加齢による免疫能の低下が原因と考えられていましたが、私達はネズミ(マウス)でもBCGの効果が減衰すること、しかも免疫能の低下ではなく、BCGを投与してからに期間に、効果の減衰が依存することをはじめて示しました (Vaccine 29,
2011)。これには免疫抑制的な制御性T細胞 (Int Immunol, 2011)などの関与があると考えて、現在、 継続してBCGが、なぜ効かなくなるのか、を検討しています。
またこのような基礎研究は、BCG接種者に対して追加免疫を実施し、防御免疫を復活させる、ワクチン開発に繋がっており、BCG製造株式会社や国立感染症研究所との共同実施で、実用化研究が行われています。
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