創薬


抗酸菌症に対する創薬

  現行の結核治療はイソニアジド(INH)とリファンピシン(RFP)を中心とした複数の薬剤で、最低でも6ヶ月の服薬期間が必要です。この主力2剤に抵抗性をもつ、薬剤耐性結核菌(MDR-TB)やさらに多くの薬剤が効かない超多剤耐性結核菌(XDR-TB)も出現しており、新規薬剤の開発は急務の課題です。
  結核菌の扱いにはBSL3施設が必要で、菌の発育に長期間を要することが、新薬開発を困難にしています。私達はワクチン株であるBCGのゲノムが結核菌と95%以上の相同性があることを利用し、またBCGの生死を、ATP依存的に発光するルシフェラーゼを発現する組み換えBCGを用いて3週間以上を要したスクリーニング期間を4日間に、さらにBSL3施設外でのスクリーニングが可能な迅速スクリーニング系を確立しました。そして、多くの抗生物質が発見されている放線菌産生物質から結核菌、MDR-TB、XDR-TBにとても強い増殖抑制能をもつ新規抗結核薬リード化合物を見つけています(Ozeki PLOS ONE 2015)。
  同様に、結核発症の原因となる増殖を停止して体内に潜んでいる休眠結核菌にも有効な新規薬剤の開発を進めています。私達は、結核病巣の肉芽腫内環境を試験管内で再現し、低酸素下で休眠菌を作成する系を作りました。そのような休眠菌に作用のある化合物探索を行っています。また、難治性の非結核性抗酸菌症(NTM症)に有効な化学療法薬開発に取り組んでいます。

抗酸菌症に対する創薬・新規抗結核薬候補物質と既存の抗結核薬との比較
抗酸菌症に対する創薬・新規抗結核薬候補物質と既存の抗結核薬との比較

a, b: 新規抗結核薬候補物質と既存の抗結核薬との比較

抗酸菌症に対する創薬・候補物質のNMR

c:候補物質のNMR

抗酸菌症に対する創薬・マススペクトル

d: マススペクトル


抗酸菌症に対する創薬・候補物質の細胞内増殖結核菌に対する増殖抑制活性
抗酸菌症に対する創薬・候補物質の細胞内増殖結核菌に対する増殖抑制活性

e, f:  候補物質の細胞内増殖結核菌に対する増殖抑制活性

Ozeki Y., Shymma E. Matsumoto S. et al. A new screen for tuberculosis drug candidates utilizing a luciferase-expressing recombinant Mycobacterium bovis Bacillus Calmette-Guéren.
PLoS ONE 10(11):e0141658. doi:10.1371/journal.pone.0141658